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立命館大学男子陸上競技部は立命館大学の体育会の部活です。

TEL.077-566-1111(大学代表)

〒525-0058 滋賀県草津市野路東1-1-1クインススタジアム


伊坂忠夫部長コラム
2014年



12月

【秒差なしの戦い】

 今年の関西学生駅伝は、史上まれに見る激戦でした。優勝は立命館大学、秒差なしで2位が京都産業大学、続いて1秒差で3位が関西学院大学。関西学生駅伝は8区間 81.4kmでの駅伝競走。ことしの優勝タイムが4時間10分4秒なので、全体の平均スピードを時速20kmと考えると、1秒差がつくとその距離は5.5mになります。今回は、秒差なし(駅伝の記録は秒単位)ということで5.5m以内の差、実際には1mも差がなかったようです。本当に僅差の戦いで、その当日のパフォーマンス、実力には差がないとみられます。

 しかしながら、やはり優勝と2位では達成感に大きな違いが生じます。昨年は、逆に秒差なしの2位で選手、部員たちは相当に悔しい思いをしたはずです。この秒差なしの勝負は、何によって決まるのでしょうか?8人で81.4kmを走って、ゴールでは数メートルの差。一人の選手が1mずつ差を持てば8mとなり、秒差がつきます。本当にこの微妙な差を生み出すものは、何なのでしょうか?何よりも、優勝と2位という結果がもたらすものの影響の大きさを考えると、勝利の女神の気まぐれか、あるところでの風の吹き具合なのか?

 でもやはりそのような勝利の女神の気まぐれや環境のせいで決められたのでは面白くありません。「勝負は内にあり」と考えて、実力拮抗した中で最後の最後で微妙な差がつくのは、チーム内、クラブ全体が醸し出す雰囲気、緊張感、執着心のような、なかなか計量できない要素が複合した結果ではないか、と考えてしまいます。そのように考えないと説明がつかず、かつ次につながらないように思えます。また、このような僅差の戦いを経る中で、その原因分析を客観的な指標、データと照らし合わせながら解析することで、クラブに良好な文化、風土が醸成されます。このことが、何よりも大事なことと感じています。

 いずれにしても、選手も応援する部員も、昨年の秒差なしの2位、今回の秒差なしの勝利から、次への飛躍の課題を学び取ってくれて今後のトレーニング、クラブ運営に活かしてくれることを心から願っています。

20141211 伊坂]



11月

【コラム】ローマは一日して成らず

先日、イタリア・ローマで学会があり、参加してきました。1999年に学会でローマを訪れたのが最初で、今回が2回目でした。前回は、ミレニアム(祝2000年)の前で、至る所で補修、改修工事中でしたが、今回はかなり整備されていた印象を持ちました。 

サンピエトロ寺院の天井のドーム部分まで数十メートルの高さですが、登ることができます。モザイク画の天井壁を間近でみることができ、さらには屋上に出てローマ市内を一望することができます。屋上からみた、統一感の取れた屋根の色、コンセプトに基づいた家並み、森(公園)の配置など、全体が織りなす素敵な雰囲気が、世界中の人々を観光地ローマの魅力と感じました。 

また、サンピエトロ寺院そのものの建造は、完成までに150年以上もかかっているとのこと。最初に発案した人の意志をどのように受けつぎ、完成まで漕ぎ着けたのか、そのシステムが知りたくなりました。単に設計図があっただけではできない一大事業。発案者の想い、意図をどれだけ理解し、その想いと意図を連綿と伝え完成させる作業は、建造物に限らず、素晴らしいことです。

さらに大聖堂の壁面のモザイク画は、色の違う石を並べて、ひとつの壁画を作り上げます。それぞれの持つ石の見事さ以上に、全体構成がもたらすきめ細やかな表情に驚かされます。組織を考えた時、それぞれの個人としての意志(石)を持ちながらも、全体が生き生きと活動する大きなシステム(壁画)を構成できることが、組織力の高さと継続可能性を示してくれます。

まさに、「ローマは一日して成らず」です。大きな構想(ビジョン)にベクトルを同じくし、それぞれの役割を果たすことが、歴史に光彩を放つ文化、そして組織づくりにつながるのでしょう。 

20141105 伊坂]

9月

【コラム】オープンソースの時代

 「リケジョ」のイベントのコーディネータを務める機会が夏休みにありました。いわゆる理系の学部、大学院をでて、社会で活躍した方をお招きして、基調講演、パネルディスカッションを展開し、これから大学受験を考えている高校生、保護者、先生方、大学生などに、将来の進路を考えるきっかけにしてもらうイベントです。本学の理系4学部とスポーツ健康科学部が合同で昨年から開催しています。

 今回の基調講演者は、Mozilla Japan代表の瀧田佐登子さんでした。彼女のこれまでの人生そのものが小説になるほど波乱万丈で、そのめまぐるしい展開に思わず何度も引き込まれてしまいました。大学は化学系で研究し、男女雇用機会均等法が施行された頃に、ある新聞広告、“女性初のエンジニア募集”に惹かれて就職を決める。いまでいうソフト開発のエンジニアとなり、ブラウザ(HPをみたり検索するソフト)開発を手がけることになりました。その後、色んな経緯があり、企業買収などの影響で、一時ブラウザ開発を断念する状況になる。

 ただ、オープンソース(いわゆる会社がソフトを開発するのではなく、プログラム内容を公開しユーザーが自由に開発に参加してソフトの改良が行える)時代となり、インターネット隆盛の波が来ていたころにNPO法人Mozilla Japanの設立に関わる。そこでFirefoxというブラウザを立ち上げることになる。ユーザー、開発者が相互にフィードバックを与えることで、ネットコミュニケーションの方法や表現法に変化をもたらしライフスタイルを大きく変えた。「インターネット/Webは誰のものでもなく国境のない世界である。」ことをユーザーが実感する時代となりました。さらに、Innovationは技術者ではなく、利用者がもたらし、利用者が世界を変えた!とも語っていただきました。

 もちろん、ここに至るまでには大きな壁や乗り越えるべき境界もあったようですが、仕事を進める上での基本的なスタンスは、1)あきらめない、2)問題解決は1通りではない、3)失敗は失敗ではない、4)希少価値こそチャンス、5)Tryなければ結果なし、の精神だったようです。最後に、「世の中を変えるには少なくとも本気の3人がいればよい。その3人がさらに多くの人を巻き込んでいくことで世の中は変わる。」、と力強く実感を込めて語っていただいたことが印象的でした。学生を育てる立場にいる身として、世の中にイノベーションをもたらす人材育成の基本姿勢を再確認するとともに、『未来へのチャレンジ』に思いを馳せる機会となりました。

201409185 伊坂]

5月

【コラム】学生スポーツ(インターカレッジ、対校戦)

春のシーズン真っ盛りとなりました。キャンパス内でも、アメフト、ラグビーの春の定期戦が開催されています。日頃のトレーニングで鍛えた身体、戦術、戦略を駆使して、学生選手たちが試合を戦っています。普段の教室、廊下でのすれ違いでみせる表情とは違った表情で、自らのパフォーマンスを発揮するために、集中して真摯に取り組んでいる姿勢をみていると、こちらまで凛として元気をもらえます。

学生スポーツは、「する」だけでなく、運営も学生が主体となって「支える」場面、そしてクラスメートたちからの応援(「みる」)を含めて、学生が主役です。日常の正課での活動にも、真摯に努力し、教室外での課外スポーツにおいても、ひたむきで継続的な取り組みが、応援する側、みる側にも共感を与えてくれます。

いわば、学生スポーツは、正課と課外が両輪となって、選手がパフォーマンスを高める機会となり、そして母校のアイデンティティを背景に多くのクラスメート、校友(OBOG)を巻き込んだ「みる」「支える」によって舞台が整えられ、社会的影響を強めていきます。

 日本の社会は一般的に学生には寛容といわれています。それは若者の成長を暖かく見守る風土があるので、「多少のことは大目にみてもらう」ことが許されています。その分、若者は成長の過程で大きなチャレンジをしたり、ときにはやんちゃなことをしながら、周りの大人の寛容と指導によって成長し、受け止めてくれた社会の仲間入りを果たします。言い換えると受け止める大人もそのような経験を積んで社会人となった人が多いということでしょう。

 学生スポーツでの学び、気づきは、パフォーマンスの向上に限ったことだけではありません。学生時代にはパフォーマンス向上に集中するあまり意識しなかった、周囲環境の恩恵、母校の伝統、正課との連携、組織など、多くのことを実践し、体験し、身に染みて学んでいたことを、社会に出て感じることがあるでしょう。

 春のシーズンの熱戦をみて学生スポーツのもたらす力、影響を改めて感じました。同時に、この素晴らしい『学生スポーツ』をさらに継続的に発展させる使命の大きさも感じています。

20140517 伊坂]

4月

【コラム】高校野球指導現場からの提言

先日、第13回びわこスポーツ傷害フォーラムに参加してきて、『高校野球指導現場からの提言―望ましい指導とスポーツ医学の関係―』の講演を聴きました。講師の先生は、滋賀県で長らく高校野球の監督をされ甲子園出場経験があり、現在は滋賀県体育協会で競技力向上ならびに指導者養成を担当されている今井義尚先生でした。

長年の指導経験から表題について講演されました。指導者になったばかりの頃は、「練習量と結果は比例する」という観念から、朝早くから、夜遅くまでひたすら練習をさせていて、選手の心技体も猛練習でついてくると信じて指導を進めていた。ところが、ある時期に指導の曲がり角を迎える。その時に考えたことは、監督の指導力・人間力が重要で、その向上を求めて、多くの指導者と会い、スポーツ科学の導入(医学、心理、トレーニング、コーチング)をしはじめた。また、大学院へも進学し本格的に指導について研究を始めるようになる。指導力を高めた後も、『もう一歩の壁が越えられない』時期があり、その時に考えたのが、「選手に自己ベストを出させる」ということ。そのためには、心技体のコンディショニングの重要性を思い至り、「故障しない心技体」「故障・ケガからの復帰」を重要視して、スポーツ医学・スポーツドクターを積極的に取り入れるようになった。

その頃の良い事例として、デットボールで、利き手の人差し指を粉砕骨折したピッチャーが、良いスポーツドクターとの出会いで、夏の大会にも間に合った。悪い例として、他高校の事例から、中継ぎとして力が認められたピッチャーが、コンディショニングを整えて本番にのぞもうと考えてスポーツ整形を受診したところ、そのチームの監督は「故障持ち」と判断して、試合で登板させず。このような悪例があると選手は、状態が悪くても医者に行かない、隠れて医者に行くことになり、スポーツ整形との連携が取れない。

上記のような例をあげた上で、今後のスポーツ医学、メディカルサポートに向けて、選手に寄り添った対応(その選手の今のステージ、これからのステージ、その選手の思い)、コンディショニングという観点で日常から定期な通院でトレーニングを含めた連携(攻めの医療)を提言されました。

スポーツ現場が、スポーツ医学、メディカルサポートを取り入れるようになり、スポーツ傷害は減る傾向にあるといえます。一方でまだまだ取り組みが未成熟なスポーツ現場、サポート側の課題もあります。より一層のスポーツ科学の浸透とサポート体制強化で、スポーツ傷害が予防されることを願っています.

20140419 伊坂]

3月

【コラム】象使いと象

 永遠の流行本、て聞かれてなんだか分かりますか

その答えは、英語の本とダイエットの本らしいです。その理由は、「英語は○○」のように、○○に当てはまることだけで英語がマスターできると勘違いして、この種の本を色々と手を出してみるが身につかず、本ばかりがつんどかれる状態になるからだそうです。ダイエットも同様で、「○○式ダイエット」のようにある特定の(しかも簡単に見えそうな)やり方だけで、ダイエットに成功するかのようなイメージをもたせ、でも結果として失敗して、次の「○○式ダイエット」へと走ってしまう。ということが繰り返されるので、巷から英語とダイエットの本は無くならないらしい。

 人間は本来怠け者で、何とか楽をしたいもの。その楽をする、という精神で知恵を巡らし、生活に工夫が生まれることもあります。ただ、一定のスキルを身につけたり、身体の変化をおこさせるためには、一定の粘り強い時間と集中ならびに総合的な取り組みが必要となってきます。そのことを忘れて、一つのコツのみでマスターしようとすると、結局失敗してしまいます。

 日頃からコツコツ粘り強くやることは非常に貴重なことです。一念発起して、「何かをやろう!」と決意しても継続するのは難しいものです。象使いと象の例えで説明されますが、象使いは理性(知性)、象は情動(感情)と考えてみると、体重の小さい知性では、体重の大きな感情を制御するには、力とエネルギーが必要で、すぐにばててしまいます。つまり、理性である象使いのエネルギーだけでは、思う方向に継続的に向けるのは難しく、大きな身体の象本体(感情)そのものがその方向を向くような工夫が必要になります。例えば、願っていることが実現したときに「こんな素晴らしいことになる」という大きな目的・目標に導かれるようなものです。ただ、先の目標よりも、ついつい手前の美味しいものに手が出て道草を食ってしまうのが常なので、その制御を考えておく必要があります。

 仕事にしろ、スポーツにしろ、何かを身につけるには千時間、1万時間の法則があるといわれます。千時間は、13時間毎日行って1年、1万時間はそのペースだと10年かかり、19時間だと3年。もちろん集中した時間であればあるほど効果的であるのはいうまでもありません。気まぐれな象をこれだけの時間、継続的に集中させるには、強い思い(感情)を持ち続ける工夫がなければ続きません。継続するための仕掛け、コツを考えるときに「象使いと象」の関係を持ちだして考えてみて下さい。

 

20140311 伊坂]



20140311 伊坂]



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