本文へスキップ

立命館大学男子陸上競技部は立命館大学の体育会の部活です。

TEL.077-566-1111(大学代表)

〒525-0058 滋賀県草津市野路東1-1-1クインススタジアム

伊坂忠夫部長コラム2010年

12月

『コーチングの視点』

 先日,オリンピックに連続出場した,400m障害の元日本記録保持者の山崎一彦先生(福岡大学)をお招きして,『コーチングの視点』のテーマで講演を頂きました.多くの部員の参加もあり,講演後には,特別にワークショップも開いてもらい,部員の食い入るような集中と質問に山崎先生もついつい熱がこもり長時間お話し頂きました.

 山崎先生は,400m障害の選手としては,当時として非常に身長が低い選手でした.ただし,そのことをネガティブに捉えずに,技術系の400mHでは技術的要素が強く働くと考え,レースペースを独自理論で構築された.また,当時としては珍しく,海外転戦を積極的に取り入れ,早くから「世界レベル」を見据えたチャレンジを行い,世界で活躍された実績を積み上げられました.

 今回の講演では,コーチングの視点というタイトルで,示唆に富む見解を披露いただいた.その一つとして,「日本人のもつ素晴らしいもの」として,技の伝授(非言語表現もふくめて)が日本人の特徴としてある.また,ハードルに関しては,ハードルにあてないようにする→すれすれにあてる という発想をもち,さらには,あてられる人は、あてられないようにすることができる,という考えをもつことで違う観点からのアプローチができるようになる,との説明があった.

 また,イギリスでのコーチ留学の経験から,「日本とイギリスの違い」を指導体制、理念などの違いから説明があった.その一つとして,競技者の人口と競技レベルはピラミッド型か,台形(裾野は広いがトップがない)か,という問いかけがあり,100mのランキング100位の日英の比較から,トップは、イギリス,ベスト20以降は日本が強い,ことのデータを出しながら,競技力向上への各国の取り組み方法の違いを紹介した.

 さらに,トレーニングについての視点として,成長期を過ぎたら,トレーニングを減らす.質を高める,という発想を持つこと.高校時代から大学へのトランジッション(移行)が上手くいかない典型例として,トレーニング量を追求しすぎることの悪影響の指摘があった.また,IgA腎症発症から競技復帰した選手の事例をあげて,これまでの考え方,トレーニングの発想を変えることの重要性の指摘があった.この選手は,病気のため大学入学から2年間運動できず,その後の競技復帰のとき,トレーニング量を下げ,トレーニング方法を変え,トレーニングの再構築と精選化によって,自己記録更新することができた.

 選手の発達・進化に関しては,「成功体験があると変えられない.変化があるときに,次の進化を考える」ことの重要性を指摘するとともに,コーチにたいしては,「予言者で満足するな」という指摘があった.よくある話として,・・となってしまうぞ!」というと、本当になってしまう場合があること,「ほらみたことか」といって勝負はまけてしまう。減らすべき,戒めるべき言葉かけであることを注意されていた.

 実践者(選手,コーチ)としての経験のみならず,研究成果を踏まえて,科学的思考を行った上での独自の理論にもとづいた選手指導は,この間の選手育成で遺憾なく発揮されている.一流コーチの熟考した指導法を学生,部員とともに学ばせてもらった.


7月

【準備力】

今年、ワールドカップ(南アフリカ大会)が開催され、睡眠不足の夜を過ごされた方も多かったこととでしょう。直前のテストマッチでの不振(4戦全敗)のせいで、日本チームの前評判がすこぶる悪く、「あまり期待されていなかった」前評判でした。ところが、初戦のカメルーン戦での見事な勝利から、俄然、全国民の注目をあび、オランダとの見事な戦い、ウルグアイ戦での勝利で見事に予選を勝ち上がり、決勝トーナメントに進出しました。まさに戦前の予想からすれば快挙といえるできごとで、日本中を熱狂の渦に巻き込んでしまいました。

 ところで、今回のワールドカップで日本がトップであった数字があります。その数字は59%で優勝したスペイン、ドイツよりも高いものでした。これは、オンターゲット率とよばれるもので、全シュート数に占めるゴールの枠内にいったシュート数の比率です。つまり、日本が放ったシュートの6割がゴールの枠内に入っていたことを示しています。この裏には、今回公式球として使われた新しいボールを今年のJリーグの試合の公式球にいち早く取り入れたことと深い関係があります。滑りやすいボールに選手が普段から慣れ親しんだことでボールタッチ、シュートの正確性を得たことを示しています。

 もう一つワールドカップでの準備の良さを示すものに、「高地トレーニング」があげられます。初戦のカメルーン戦は、1700m前後の高地での試合であることから、日本サッカー協会は、高地トレーニングのスペシャリストを事前に依頼して、どのタイミングで、どのように高地順化していればパフォーマンスを落とすことなく普段通りの力が出せるかを検討していました。そのために、最終調整値としてスイスの高地が合宿先に選ばれ、見事に初戦の勝利につなげました。対戦相手のカメルーンは、後半足が止まっていたことに気づいた方も多いでしょう。まさに準備の差が現れた好例です。

 「備えあれば憂いなし」とはよく言われますが、これを徹底させ、最後の最後まで、念には念を入れた準備が大一番に利いてくることを上記2つのことは教えてくれています。スポーツの成績のみならず、仕事でも勉強でもプロジェクトでも通じることです。準備力を普段から高めていきたいものです。


7月

●【リーダーの覚悟】

 先日、ある講演会でスポーツ評論家の二宮清純さんの「勝者の組織改革」というお話しを聞いた。特にリーダーによって組織が変革し、社会に大きな影響を与える存在になるまでに発展する、ということを二宮氏自身が側で実感したJリーグの事例を紹介されながら、「リーダーの条件」についての持論を展開された。興味深い内容なので紹介したい。

 Jリーグ創設前の日本代表の試合会場は、観客が少なく閑散とした状況であった。今の状況からは想像もつかないが1000人にも満たない試合が多かった。その当時、「日本のサッカーを強化し魅力あるものにするには、プロ化しかない!」と考えていた川淵三郎氏は、プロ化への導入に向けて準備を進めていた。しかしサッカー協会のある会議で、反対勢力あるいは守旧派勢力から、「時期尚早である!」、「先例がない!」と責め立てられる。そのとき、川淵氏は机を叩いて、「時期尚早であるという者は100年経っても時期尚早という! 前例が無いという者は200年経っても前例が無いという! やれないことを並べても物事は前に進まない。前に進めるために、やるべきことは何かを考えずして道は開けない!」ということを裂帛の気迫でメンバーに迫った。このことを契機に、日本サッカー協会は、プロ化への道へ進み、100年構想を打ち立て、地域との連携の中でサッカーというものが位置付くようにし、さらには日本代表の強化とファン獲得を行うことができるようになった。

 リーダーの条件として、@Passion(情熱)が重要であり、AMission(使命、理念)が受け入れられるものでありブレずに大きな力を生みだし、BAction(行動)がまさに率先垂範のごとく部下や周囲を巻き込んでいくことが要諦である。そのためには、まず机上の空論ではなく、地上の正論にするためのリーダーの覚悟(度胸)にもとづいた判断が何よりも重要である。

 講演の最後で二宮氏は、イタリアのサッカー関係者が書いた本の一節を紹介した。そのことばは、“il bello dorso”(美しい背中、凛とした背中)であり、「良きリーダーたらんとする者は良き背中を持て!」という内容だそうだ。子どもは親の背中を見て育つ、生徒は教師の背中を見て育つ、選手は監督・コーチの背中を見て育つ、会社の部下は上司の背中を見て育つ。どんなレベルであれ指導する立場の者はしっかりとした背中を持つべき、との話を最後に聞き背筋をシャキッとしながら背中が語る力強さを改めて認識した。

バナースペース

立命館大学男子陸上競技部

〒525-0058
滋賀県草津市野路東1-1-1クインススタジアム内
立命館大学体育会男子陸上競技部

TEL 077-566-1111(大学代表)

inserted by FC2 system